伊藤計劃・円城塔の「屍者の帝国」を読みました

伊藤計劃・円城塔の「屍者の帝国 (河出文庫)」を読了しました。

本作は伊藤計劃が亡くなった後、それを円城塔が引き継いで書いたという作品です。

読みごこちとしては、やや難しいと感じました。 今まで以上に、横文字言い換えが多くなる ことと、登場人物が多いからかな?と思います。 しかし、登場人物が私でもちょろっと聞いたことのある人物(主にSFだと思います)だったりするので、そこはSFを深めた人だと、よりニヤニヤしてしまうと思います。

話の本筋としては、死んだ人間を屍者として使役し、人間の代わりに馬車を引いたり、生産業をしたりという近未来的な話。 しかし、舞台が19世紀なので驚き。 昔の人が考えた未来とはこういうものなのか?と思いきや、この時代だからこそ、実現してたら面白いという感じです。 ザ・ワンは自分のお嫁さんが欲しくて、悪戦苦闘していたようですが、ずっと1人で何年もそんなことするのだから、自分が生まれたことも恨めしい気持ちがありそうです。

最後はフライデーが意識を開花させたような書き方で終わります。 フライデーはただの書記ではなく、一連の起こったことを見ていて、プログラムを少しいじったら意識(のようなもの)が浮上したのではないかと思います。

あとがきで、円城塔が書いてますが、本当にこれから死ぬ人が死んだ人間を書くというのは特異なことで、面白い発想だと思いました。

「霊素」が度々出てきますが、なんとなく攻殻機動隊に出てくる「ゴースト」に近いものを感じました。

言葉が何を意識付け、私が私であることも言葉によって成り立つ。 もしも、この作品を読んでなかったら、どんな風に今過ごしているだろう。と思わせる本作。 言葉のもつ力をテーマとしているところが、ただのSFではないことをふつふつと感じさせます。

ぜひ。

屍者の帝国 (河出文庫)

屍者の帝国 (河出文庫)

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